『まあ、こちらからの情報は以上だ。予定通り、そちらは今夜【例の本】を手に入れ、今後それについて何か分かれば知らせくれ。――まぁ雪弥がいるとはいえ、私にとっても、お前からの話は想定の範囲を超えすぎて現状の予測もつかん。だから、こちらも念のため、予定外の事態に備えていつでも動けるよう待機はしておく。それでいいな?』

 そう確認のため問い掛けて、ナンバー1は返事を待つように黙りこんだ。

 葉巻の煙を吐き出す豪快な音が、電話越しに聞こえてくる。蒼慶は、社交パーティーの会場で初めて対面した際に、『別の名』を名乗っていた彼の大きな彼の姿を思い浮かべながら、窓の方を見やってゆっくり立ち上がった。

「分かっている。その際には、敷地内に踏み込む事を許可する」

 そう答えた蒼慶は、そっと手を持ち上げると、窓を遠慮がちに開けた。電話の向こうでは、吐息まじりの返答の声を聞いたナンバー1が、言葉もなく煙を吐き出し続けている。

 太陽の眩い光りが直接差しているわけでもないのに、蒼慶は外を見やった拍子に目を細めた。頭上は青い空が広がり、眼前には見慣れた風景が佇んでいる。