『今のところ、それ以上は分かっていない。表十三家の全部を回る必要性を考えるが、お前から先に聞いた二件の家だけでも、かなり大変だったからな……。あの連中の、時代が一つ違うみたいな考え方は、どうにかならんのか? 一回目のアポで『我が一族は殿の意向なく動かん』とつっぱねられたんだぞ』

 殿ってなんだよ、とナンバー1が言う。

 蒼慶は、以前自分が教えた中の、とある一族が思い当たり「ああ、なるほど」と呟いて、ふっと薄い笑みを浮かべた。

「アレらは、元よりそういう一族だ。言っただろう、『忍者だ』と」
『まぁ、山奥にあった本家とかいう屋敷は、まさに忍者屋敷みたいな城だったが』
「先に『殿』の方の家をあたれば良かった、というだけの話だろう。私は、はじめに表十三家の中のその名を教えたはずだが?」

 途端に電話越しに、野太い『ぐぅ』という呻きが上がった。

『……言っておくが、家名と【異名】だとかいう云われの膨大な情報量を、ほぼ頭に詰めているお前が異常なんだ。電話越しで呪文のように一度きり名を並べられただけでは、私はそんな事まで覚えきれんし、都度メモらんと調べようもないんだからな』