「恐ろしいモノが真っ暗闇にあるのを想像して、とても恐ろしくなるの……。緋菜様が話してくれた物語の女の子が、羨ましい。だって私が見るのは、いつも怖くて冷たい、夜の夢ばかりだもの」
緋菜が「そうなの?」と不思議そうに彼女を見る。きっと怖い夢が多いのだろう、と解釈した様子で「じゃあ怖い夢を見ないおまじない、教えてあげるね」と、元気付けるように話し始めた。
雪弥は、何故かアリスの最後の言葉が、頭の片隅に引っ掛かった。けれど根拠らしい理由は何も浮かばなかったから、きっと気のせいなのだろう。
そう考えたところで、先程兄に『行け』と言われている身である事を思い出した。やはり話題を繋ぐのは苦手だとも感じたので、この辺で抜けても大丈夫だろうか、と妹達の様子を窺う。
「すまないが、少し席を外す」
しばし、険しい表情で雪弥達の方を見つめていた蒼慶が、思案顔でそう告げて立ち上がった。桃宮がハッと顔を上げて、同じようにして席を立つ。
「その……、それでは私は、娘のアリスの様子を見てきますね」
しかし、そう答えた桃宮を、蒼慶は振り返る事もなく屋敷へと向かっていった。
緋菜が「そうなの?」と不思議そうに彼女を見る。きっと怖い夢が多いのだろう、と解釈した様子で「じゃあ怖い夢を見ないおまじない、教えてあげるね」と、元気付けるように話し始めた。
雪弥は、何故かアリスの最後の言葉が、頭の片隅に引っ掛かった。けれど根拠らしい理由は何も浮かばなかったから、きっと気のせいなのだろう。
そう考えたところで、先程兄に『行け』と言われている身である事を思い出した。やはり話題を繋ぐのは苦手だとも感じたので、この辺で抜けても大丈夫だろうか、と妹達の様子を窺う。
「すまないが、少し席を外す」
しばし、険しい表情で雪弥達の方を見つめていた蒼慶が、思案顔でそう告げて立ち上がった。桃宮がハッと顔を上げて、同じようにして席を立つ。
「その……、それでは私は、娘のアリスの様子を見てきますね」
しかし、そう答えた桃宮を、蒼慶は振り返る事もなく屋敷へと向かっていった。