あの時、何故かナンバー1は、顔をそむけて声を殺して笑っていた。彼のそばには二桁エージェントがいたのだが、凝視されたうえ今にも死にそうな愛想笑いを返された。ちゃんと飼えていると思うのだが、二人の正反対の反応が謎である。

 あ、鳥。

 青空に一羽の鳥が見えて、なんとなく目を向けた。頭上を旋回する様子を見上げていたら、背中にしている道の方から、驚いた男の声が聞こえてきた。

「兄ちゃん、こんなところでどうした?」

 ゆっくり肩越しに振り返ってみると、聞き慣れないエンジン音を上げる一台のトラクターが停まっていて、その運転席に一人の男が腰かけていた。

 齢は四十代の後半頃、小麦色に焼けた細身をしており、麦わら帽子に袖の切られた作業着シャツという姿だった。恐らくは、この畑の所有者なのだろう。そう推測しながら、雪弥は気が抜けそうな表情のまま口を開いた。

「ここに座って、新鮮な空気を十分に吸っているんです」