すると、アリスが不安な眼差しを向けて、緋菜のスカートの裾を掴んだ。
「なんだか、怖いわ……」
「あ。これは蒼慶お兄様の作り話だから、気にしないで」
つい、うっかり彼女の存在が頭から抜けた緋菜が、慌てて言葉を付け足した。こんな事があったのだ、という愚痴を、久々に会えた二番目の兄に伝えたかっただけなのである。
「その、ちょっと思い出しちゃっただけで、怖がらせるつもりはなかったのよ。なんというか蒼慶お兄様は、普通の童話を怖いバージョンのセットで話すところがあったというか……。変なところで『よく怖がらせたがる』ところがあったのかも」
そう続けた彼女が、再びアリスに詫びて、今度は怖くない方の童話の内容を話し始めた。
その声を聞きながら、雪弥は呆れ返った視線を蒼慶の方へと向けていた。数メートル離れたテーブル席にいるというのに、こちらの話をちゃっかり聞いていたのか、兄の顔には『心外だ』と言わんばかりの顰め面が浮かんでいる。
「なんだか、怖いわ……」
「あ。これは蒼慶お兄様の作り話だから、気にしないで」
つい、うっかり彼女の存在が頭から抜けた緋菜が、慌てて言葉を付け足した。こんな事があったのだ、という愚痴を、久々に会えた二番目の兄に伝えたかっただけなのである。
「その、ちょっと思い出しちゃっただけで、怖がらせるつもりはなかったのよ。なんというか蒼慶お兄様は、普通の童話を怖いバージョンのセットで話すところがあったというか……。変なところで『よく怖がらせたがる』ところがあったのかも」
そう続けた彼女が、再びアリスに詫びて、今度は怖くない方の童話の内容を話し始めた。
その声を聞きながら、雪弥は呆れ返った視線を蒼慶の方へと向けていた。数メートル離れたテーブル席にいるというのに、こちらの話をちゃっかり聞いていたのか、兄の顔には『心外だ』と言わんばかりの顰め面が浮かんでいる。