「今ですか?」
「なんだ、私の指示に従えないのか?」
確認してみただけなのに、横目に高圧的な視線を寄越されてしまった。向かいの椅子から、桃宮勝昭が不思議そうにこちらを見ている。
このまま居座っていたとしても、桃宮と蒼慶の話しにスムーズに参加出来るわけでもないし、たとえ話を振られたとしても、碌(ろく)な相槌すら打てないのも事実だ。その辺を歩いている方が気も楽である事を考えて、「分かりました」と腰を上げた。
雪弥が歩き出した時、亜希子達と入れ替わるようにして、緋菜とアリスが奥の方からこちらに向かって歩いてきた。ブロンドのアリスとは対照的な、漆黒の艶やかな髪を背中に流した彼女が、「あ」という口の形を作って大きな目を丸くする。
「どうしたの、お兄様? どこかへ行くの?」
「改築された庭園を見がてら、ちょっとその辺を歩いてこようかと思って」
雪弥は、この場で違和感のない台詞を口にした。
チラリと目を向けてみたら、アリスがポッと頬を染めて「こんにちは」と言うと、恥ずかしそうに妹の腕にさっと隠れてしまった。二回目に顔を合わせた際の、精霊さんだとかなんとか言われた衝撃を思い出して、思わず沈黙してしまう。
「なんだ、私の指示に従えないのか?」
確認してみただけなのに、横目に高圧的な視線を寄越されてしまった。向かいの椅子から、桃宮勝昭が不思議そうにこちらを見ている。
このまま居座っていたとしても、桃宮と蒼慶の話しにスムーズに参加出来るわけでもないし、たとえ話を振られたとしても、碌(ろく)な相槌すら打てないのも事実だ。その辺を歩いている方が気も楽である事を考えて、「分かりました」と腰を上げた。
雪弥が歩き出した時、亜希子達と入れ替わるようにして、緋菜とアリスが奥の方からこちらに向かって歩いてきた。ブロンドのアリスとは対照的な、漆黒の艶やかな髪を背中に流した彼女が、「あ」という口の形を作って大きな目を丸くする。
「どうしたの、お兄様? どこかへ行くの?」
「改築された庭園を見がてら、ちょっとその辺を歩いてこようかと思って」
雪弥は、この場で違和感のない台詞を口にした。
チラリと目を向けてみたら、アリスがポッと頬を染めて「こんにちは」と言うと、恥ずかしそうに妹の腕にさっと隠れてしまった。二回目に顔を合わせた際の、精霊さんだとかなんとか言われた衝撃を思い出して、思わず沈黙してしまう。