「せっかくだ、少し馬を見せてやっては? 確か、桃宮婦人も乗馬が趣味だと伺っている」
突然呼ばれた亜希子が、「そうだったわ」と掌に拳を落とすと、思い出したように立ち上がった。
「紗江子さん、うちにとてもいい馬がいるのだけれど、見に行かれます?」
「ふふふ、見たら乗ってしまいたくなりますわ」
「あら、それ大歓迎ですわよ」
亜希子が、自身よりも年上の紗江子に手を差し出した。ゆったりと足を組み直した蒼慶が、チラリと目配せして、宵月がすっと動く。
「わたくしがご案内致しましょう」
「あら、いいの? じゃあ宜しくお願いするわ」
立ち上がった紗江子の前で、亜希子が気の強そうな表情を浮かべてそう言い、続いて蒼慶の方を見やった。途端に綺麗な若作りの顔を怪訝そうに顰めると、少し顎を引き上げるようにして見下ろす。その様子は、息子である彼にそっくりである。
「蒼慶、少し宵月さんを借りるから、緋菜とアリスちゃんをよろしくね? 緋菜には言い聞かせてあるけど、あの子もちょっと、おっちょこちょいなところがあるし、アリスちゃんもまだ小さいから、二人が噴水に落ちてしまわないか、気を付けて見ておいてちょうだい」
「ああ、分かってる」
蒼慶は答えながら、彼女から目をそらすようにして、奥の方にいる緋菜達を見やった。
突然呼ばれた亜希子が、「そうだったわ」と掌に拳を落とすと、思い出したように立ち上がった。
「紗江子さん、うちにとてもいい馬がいるのだけれど、見に行かれます?」
「ふふふ、見たら乗ってしまいたくなりますわ」
「あら、それ大歓迎ですわよ」
亜希子が、自身よりも年上の紗江子に手を差し出した。ゆったりと足を組み直した蒼慶が、チラリと目配せして、宵月がすっと動く。
「わたくしがご案内致しましょう」
「あら、いいの? じゃあ宜しくお願いするわ」
立ち上がった紗江子の前で、亜希子が気の強そうな表情を浮かべてそう言い、続いて蒼慶の方を見やった。途端に綺麗な若作りの顔を怪訝そうに顰めると、少し顎を引き上げるようにして見下ろす。その様子は、息子である彼にそっくりである。
「蒼慶、少し宵月さんを借りるから、緋菜とアリスちゃんをよろしくね? 緋菜には言い聞かせてあるけど、あの子もちょっと、おっちょこちょいなところがあるし、アリスちゃんもまだ小さいから、二人が噴水に落ちてしまわないか、気を付けて見ておいてちょうだい」
「ああ、分かってる」
蒼慶は答えながら、彼女から目をそらすようにして、奥の方にいる緋菜達を見やった。