「なるほど、それは運が良かったな」

 蒼慶が、悪意のない雰囲気で唇の端を引き上げ、桃宮の話に相槌を打った。

「そういう家は、滅多に見つからんだろう。ご婦人と共に下見に行かれたのが、幸運を引き寄せたのかもしれないな?」
「そうだと良いのですけれど。わたくしとしては、その運が続いて、蒼緋蔵家のご当主様とも夕食が出来れば、と思っていましたのよ」

 話しを振られた紗江子が、小さい微笑を浮かべて残念そうに答えた。

 少し離れた場所で花を観賞している、緋菜とアリスの可愛らしい声が聞こえてきて、亜希子がそちらを一度見て、それから視線を戻しつつ口を開く。

「そうですわよね。あの人も、早く戻ってこられればいいのですけれど……はっきりとした帰宅時間も分かりませんの。今夜には戻ってくるとおっしゃっていたのですけれど、もしかしたら、本日中に戻れないかもしれないらしくて」

 ごめんなさいね、と亜樹子が申し訳なさそうに謝った。