蒼慶は腕を組んだまま、どこかしらばっくれるようにして、少し休憩でも挟むかのように空を仰いでいた。そんな彼の傍に立ち続けている宵月が、横目をこちららへと向けてじっと見つめてきた。
雪弥は、宵月の視線に何か、含みがあると気付いて「なんだ……?」と訝った。じっと見つめ返していると、彼の瞳孔が少し右へと動いて、辿ってみた視線の先には桃宮勝昭の姿があった。
桃宮は、開いた両足の間で手を組み、口元に小さな微笑をたたえて妻達の様子を見つめていた。その眼差しは、想いやりや愛情に満ちているように見えたが、目尻に何本もの入った線がひどく疲弊した気配を漂せている。その細められた瞳が、紗江子からアリスへと移ると少しだけ和らぐ。
ふと、桃宮の喉仏が上下した。緊張を覚えたように、組んでいた両手に力がこめられて白くなったかと思うと、まるで意気込むみたいに短く息を吸い込む。
それから、ふっと微笑に戻して、彼が蒼慶を振り返った。
「そういえば、この前アメリカに移住するために、買う家の下見に行ったのですが――」
そう切り出した桃宮の話は、耳に入って来なかった。雪弥は、どこか違和感を覚えて内心首を傾げていた。ちらりと宵月に目配せすると、彼は僅かに首を左右に振って見守る方向の意思を伝え返してくる。
雪弥は、宵月の視線に何か、含みがあると気付いて「なんだ……?」と訝った。じっと見つめ返していると、彼の瞳孔が少し右へと動いて、辿ってみた視線の先には桃宮勝昭の姿があった。
桃宮は、開いた両足の間で手を組み、口元に小さな微笑をたたえて妻達の様子を見つめていた。その眼差しは、想いやりや愛情に満ちているように見えたが、目尻に何本もの入った線がひどく疲弊した気配を漂せている。その細められた瞳が、紗江子からアリスへと移ると少しだけ和らぐ。
ふと、桃宮の喉仏が上下した。緊張を覚えたように、組んでいた両手に力がこめられて白くなったかと思うと、まるで意気込むみたいに短く息を吸い込む。
それから、ふっと微笑に戻して、彼が蒼慶を振り返った。
「そういえば、この前アメリカに移住するために、買う家の下見に行ったのですが――」
そう切り出した桃宮の話は、耳に入って来なかった。雪弥は、どこか違和感を覚えて内心首を傾げていた。ちらりと宵月に目配せすると、彼は僅かに首を左右に振って見守る方向の意思を伝え返してくる。