校舎の屋上で、二人の少年と昼ごはんを食べたり、体操着で運動場を走り回っていた時も、慣れない穏やかな時間があった。結局、エージェントとしての姿を見せるまでは、社会人である事を疑われなかったなぁ、とぼんやりと考える。

「今年二十四歳になるいい大人が、高校生なんて無理だと思うんだよなぁ。……本部で顔を合わせたナンバー3とナンバー9に、めちゃくちゃ笑われたし」

 同じ一桁ナンバーの反応を思い出して、溜息がこぼれ落ちた。

 しばらく何もやる事がないまま、じっとしていた。視界に映る長閑な青い空と、心地良い風に欠伸が込み上げて、立ち上がって背伸びをした。

「このままだったら、確実に寝る」

 そう呟いた雪弥は、椅子の背に右手を置いた。椅子が倒れてしまわないよう、バランスを取りながら、ひょいと両足を持ち上げて右手一本で逆立ちをする。落ちて来そうなネクタイをシャツの中に入れて、左手を腰の後ろへあてた。

 右手一つを動かして、真っ直ぐ逆立ちをした身体を、腕立て伏せをするように上下に動かした。親指だけでもそれをやってみたのだが、やはりかなり暇である。