駅に向かう為の大通りに出たところで、思わず足を止めて、朝の光りに目を細めてしまった。少ない通行人達が交差点を行き来する中で、つい溜息が口からこぼれ落ちた。

「う~ん、やっぱり嫌だなぁ……」

 ここで行かなかったら、もっとごたごたが増す可能性もある。更に厄介な問題が発生して巻き込まれる未来を考えると、雪弥は渋々歩き出した。

 思い返せば、仕事の途中で駆け付けた緋菜の成人式も、彼女に花束だけあげて帰ろうと思っていたのに、遅れて到着した袴姿の蒼慶が走って来て、襟首を取っ捕まえられたあげく、久しぶりだとかいう挨拶もなしに説教をされたのだ。

 ますます嫌だなぁ、と思う。けれど、既にこの訪問については知らせてあったので、行かないと、兄からもっと酷い目に遭う予感もひしひしとしている。

 雪弥は、半ば諦めるようにして、とぼとぼと足を進めた。