蒼緋蔵邸の専属シェフが用意した豪華フルコースが、長テーブルにずらりと並べられた。たった七人しか腰かけていないテーブルは、中央部分の席が埋まっているのみだったが、その料理はテーブル中央にとどまらないでいる。

 誰がこんなに食うんだよ。

 一体なんのパーティーだ、と雪弥は思わず頬を引き攣らせた。使用人達が用意を整え終えても、桃宮家の三人と向かい合う蒼緋蔵家の三人から、椅子一個分の距離を置いて静かに腰かけたまま、茫然とテーブルを眺め続けてしまう。

 女性同士のお喋りは、彼が到着した時には既に始まっていた。亜希子や緋菜からは「遅いじゃない」と顔を顰めて言われてしまったものだが、そもそも彼女達は先に、ちゃっかり前菜を食べていたという状況だった。

 右から緋菜、亜希子、蒼慶と並んで、一つ分空いた席の場所に、宵月が背中を伸ばして執事らしく待機して立っていた。テーブルマナーが面倒だという気配を雪弥から察知した彼は、先程使用人に命じて、一組の箸とフォーク、ナイフとスプーンだけを残して、あとは下げさせていた。