少し思案したら、思い当たる事があった。なんだ、そんな事かと納得して安堵の笑みを浮かべると、少女だった頃と変わらず元気に手を振ってくる妹の緋菜に、小さく手を振り返しながらこう思った。
考えるまでもない。殺してしまえばいいよ。
「もうッ、雪弥お兄様ったら、もっと大きく振り返してもいいじゃない!」
「そんなこと言われてもなぁ……」
僕にどうしろと、と雪弥は困ってそう返事をした。すると、すぐに緋菜が「こっちまで聞こえないわよッ」と言ってくる。
なんで、こんな離れた距離から会話したがるのだろう。そこも昔からちっとも変わってない。雪弥は仕方なく付き合う事にして、少し力を込めて口を開いた。
「緋菜、身を乗り出すと危ないから、中に戻って。というか、どうしてそこにいるの」
「アリスちゃんと探検しているのよ」
「……探検って……、兄さんに、あまりそこには行かないようにって言われていたでしょう。行くなら宵月とか、誰か他の使用人も連れるって約束だったのに」
「大丈夫よ。だって、蒼慶お兄様もすぐ後ろにいるもの」
きょとんとして、緋菜がそう答えてくる。
その回答を聞いた瞬間、雪弥は「マジか」呟いてしまっていた。君主みたいに偉そうな仏頂面の兄が、一時的であるにせよ、黙々と彼女達の探検に付き合っている光景を想像すると、なんだかシュールに思えた。
考えるまでもない。殺してしまえばいいよ。
「もうッ、雪弥お兄様ったら、もっと大きく振り返してもいいじゃない!」
「そんなこと言われてもなぁ……」
僕にどうしろと、と雪弥は困ってそう返事をした。すると、すぐに緋菜が「こっちまで聞こえないわよッ」と言ってくる。
なんで、こんな離れた距離から会話したがるのだろう。そこも昔からちっとも変わってない。雪弥は仕方なく付き合う事にして、少し力を込めて口を開いた。
「緋菜、身を乗り出すと危ないから、中に戻って。というか、どうしてそこにいるの」
「アリスちゃんと探検しているのよ」
「……探検って……、兄さんに、あまりそこには行かないようにって言われていたでしょう。行くなら宵月とか、誰か他の使用人も連れるって約束だったのに」
「大丈夫よ。だって、蒼慶お兄様もすぐ後ろにいるもの」
きょとんとして、緋菜がそう答えてくる。
その回答を聞いた瞬間、雪弥は「マジか」呟いてしまっていた。君主みたいに偉そうな仏頂面の兄が、一時的であるにせよ、黙々と彼女達の探検に付き合っている光景を想像すると、なんだかシュールに思えた。