兄弟が揃って会話を途切れさせたところで、宵月が一つ頷いてこう言った。

「防犯カメラやセキュリティーは、命までは救ってくれませんからね」

 それから、彼は腕時計をチラリと見やって、主人にこう提案した。

「遅めに設定している昼食時間まで、私と雪弥様は少し時間があります。蒼慶様が次のご予定にかかっている間に、敷地内に他の異変がないか見て参りましょう」

 亜希子や緋菜達に悟られないように動くから、そんなに時間はかけられないだろう。けれど、現時点で他に異変がないか、他の使用人に事情を打ち明けて動いてもらうより、気配に敏感な自分達がざっと敷地内の様子を直に見てきた方が早い。

 雪弥はそう考えながら、こちらは了承だけれどそれでいいか、と確認するべく兄に目を向けた。こちらを見つめ返してきた蒼慶が、ジロリと睨むようにして頷き返してきた。
 それだけで終わるかと思ったら、彼がおもむろに口を開いた。

「勝手な事はするなよ。異変を見付けたとしても、すぐに動くな。塀に穴一つ開けようものなら、殺す」
「兄さん、どんだけ僕のこと信用がないんですか……」