「父さんが、何かしら隠し事をするとは思えないけどな。そういった事件とも無縁の土地だから、村落の人達を心配したんじゃないかと思いますよ」
「よく知っているな、こちらで何も起こっていないと」
「そりゃあ、まぁ気にかけてチェックはしていますからね」

 雪弥は、隠す事でもないかと思って、正直に答えた。この土地やその周辺、または父達に何かしら不利になる問題や兆候があるようだったら、すぐに『ナンバー4』に知らされるように手筈は整えてあった。

 宵月が見守る中、蒼慶は美麗な顔を顰めたものの「まぁいい」と、片手を振って話しを再開した。

「今回の仔馬の件からすると、その原因不明の死骸を作り出している何者かが、この屋敷の内部に入り込んだのではないかとは考えている」

 今朝から今にかけて、この短い間に六回、門扉は開かれた

 そう言って、彼は手の長い指を立てた。

「早朝一番に当主、次に分家の連中が分けて来訪。そして宵月が、お前を連れて戻って来て、その後――桃宮家がやって来た」