「知ろうと思えば、前もって日時を調べられる状況ではあったんですね?」
「その通りだ。それに、うちの情報が漏れていないという保証もないしな。――桃宮一族も、名を知られている名家の一つだ。当主を交代したのは今年の話で、彼が狙われる可能性もある」

 タイミングから推測するのなら、狙いがこちら側である可能性も高いという。みすみす桃宮家の客人に何か起こったら、三大大家の一つである蒼緋蔵の力が疑われるのだとか。
 当主と内部の『役職』も大きく交代するのも目前で、それを良く思わない者達も存在している。そう淡々と説いていた蒼慶が、独り言のようにこう続けた。

「外で動物の変死体が続けて発見された際、父上は動揺しているようだった。だが私が、何か心当たりでもあるのかと尋ねると、知らないと言う」

 そこで蒼慶は言葉を切って、難しい表情をした。
 兄が、このように眉間の皺を深めて考え込む様子は珍しい。雪弥は不思議になって、尋ねてみた。