雪弥より四つ年上の長男の名を蒼慶、一つ年下である長女の名を緋菜といった。父や腹違いの兄弟達だけでなく、蒼緋蔵家当主の正妻である亜希子も、愛人である紗奈恵とその息子の雪弥をすんなりと受け入れて、今の家族構成となっている。
大富豪の家とあって、親族関係者からは良く思われていなかった。当主は『蒼緋蔵本家としての権限には影響力を持たせない』とわざわざ書面を作り、雪弥に蒼緋蔵の名字を与えたのだが、親族たちはしつこいほど強く反対し続けていた。
だから雪弥は、外では名字をあまり口にしなかった。
幼い頃から、自分の存在が、愛する父を悩ませるくらい蒼緋蔵家の人間達から疎まれている事を感じていた。父や義母や兄弟たちが好きだったからこそ、家族に迷惑をかけたくなくて、母が亡くなってから本格的に蒼緋蔵家から距離を置き、表立った関わりを出来るだけ断つように心掛けた。
現在、家族とのやりとりは、主に電話で取っている。嬉しい事に先日、親族達に慕われている長男の蒼慶が、次期当主となる事が正式に決まったとの知らせを受けた。後は、就任式の日取りが確定し、その日を迎えれば彼が当主となる。
これでようやく蒼緋蔵家も落ち着き、父もゆっくり出来るだろうと安心した矢先、雪弥はすぐ新しい問題に直面してしまった。
どうやら兄である蒼慶が、自分の右腕の地位に弟を置く、と言い出したらしいのだ。それは当主にもっとも近い副当主という地位であり、蒼緋蔵グループの中で二番目に権力を持つ立場だった。
愛人の子が当主の傍にいたら、またしても分家の人間達が勝手に騒ぎ立てるだろう。考えればすぐ想像がつく事なのに、あの冷静沈着でしっかり者の兄が、このタイミングで爆弾を落とすような発言をした事が信じられないでいる。
なんの気の迷いかは知らないが、それについてはしっかり軌道修正してやるつもりでいた。だから雪弥は、この休日を使って、数年ぶりに蒼緋蔵家へ向かう予定を立ててあった。面と向かって『提案は却下です』と言い、説得するためである。
大富豪の家とあって、親族関係者からは良く思われていなかった。当主は『蒼緋蔵本家としての権限には影響力を持たせない』とわざわざ書面を作り、雪弥に蒼緋蔵の名字を与えたのだが、親族たちはしつこいほど強く反対し続けていた。
だから雪弥は、外では名字をあまり口にしなかった。
幼い頃から、自分の存在が、愛する父を悩ませるくらい蒼緋蔵家の人間達から疎まれている事を感じていた。父や義母や兄弟たちが好きだったからこそ、家族に迷惑をかけたくなくて、母が亡くなってから本格的に蒼緋蔵家から距離を置き、表立った関わりを出来るだけ断つように心掛けた。
現在、家族とのやりとりは、主に電話で取っている。嬉しい事に先日、親族達に慕われている長男の蒼慶が、次期当主となる事が正式に決まったとの知らせを受けた。後は、就任式の日取りが確定し、その日を迎えれば彼が当主となる。
これでようやく蒼緋蔵家も落ち着き、父もゆっくり出来るだろうと安心した矢先、雪弥はすぐ新しい問題に直面してしまった。
どうやら兄である蒼慶が、自分の右腕の地位に弟を置く、と言い出したらしいのだ。それは当主にもっとも近い副当主という地位であり、蒼緋蔵グループの中で二番目に権力を持つ立場だった。
愛人の子が当主の傍にいたら、またしても分家の人間達が勝手に騒ぎ立てるだろう。考えればすぐ想像がつく事なのに、あの冷静沈着でしっかり者の兄が、このタイミングで爆弾を落とすような発言をした事が信じられないでいる。
なんの気の迷いかは知らないが、それについてはしっかり軌道修正してやるつもりでいた。だから雪弥は、この休日を使って、数年ぶりに蒼緋蔵家へ向かう予定を立ててあった。面と向かって『提案は却下です』と言い、説得するためである。