それがとうとう五組に達した時、雪弥は自分よりも座高のある宵月の横顔へ目を向けた。「唐突で申し訳ないんですけど」と前置きしながらも、勝手に自分の隣に座った彼からぎこちなく視線をそらして、この状況に対する思いを口にした。

「…………宵月さん、これ、なんかおかしくないですか?」
「何がでしょう?」

 さらりと返されて、雪弥はピキリと青筋を立てた。

 どこか変態的に兄を慕っている彼が、昔から悪目立ちするような状況を作ったり、こちらをドン引きさせるか怒らせるのはしょっちゅうあった。そして、今だって、わざとくっついて座っているという事にも気付いている。

「蒼緋蔵邸の使用人の中で、一番偉い仏頂面のおっさんが、こうして階段に直に腰を下ろして、僕と並んで座っている事がだよ」

 過去を思い返しながら、雪弥は忌々しげに指摘した。しかし、隣に座っている彼の方へ視線を戻して睨み付けてやる、という行動には出られなかった。何故なら、至近距離から彼に鋭い目を向けられているのを、横顔にひしひしと感じていたからだ。