「亜希子さん、どうかなさったの?」
不思議そうに問い掛けられて、亜希子は慌てて「ううん、なんでもないのよ」と、うっかり素の口調で謝っていた。けれど紗江子は気にしないでいてくれて、再び話し始めた。手振りを交える少しの仕草も、やはり亜希子に懐かしさを感じさせた。
愛しい妹同然だった彼女を思い起こして、まじまじと見つめてしまう。そんなはずはないのに、まるで年を取った紗奈恵が生きてそこにいるような印象さえ受けて、そんな自分が不思議になった。
そもそも桃宮紗江子という女性は、元からこのような雰囲気だっただろうか。そんな違和感が頭の片隅に過ぎったものの、話していると気のせいにも思えた。
◆◆◆
二階の部屋で、蒼慶達と桃宮一家の交流会が行われている中。
本館に戻った雪弥は、半円形状の大階段の途中で、宵月と並んで腰かけていた。どちらも膝を抱えるようして座り、階上の開かれた大扉の向こうから、時々こぼれてくる笑い声にぼんやりと耳を傾けている。
「兄さん達、結構話し込んでいるみたいですね」
「そのようですね」
時々、廊下や大階段を通って行く使用人達が、驚いたように二人を見ては、そそくさとその場を去っていっていた。
不思議そうに問い掛けられて、亜希子は慌てて「ううん、なんでもないのよ」と、うっかり素の口調で謝っていた。けれど紗江子は気にしないでいてくれて、再び話し始めた。手振りを交える少しの仕草も、やはり亜希子に懐かしさを感じさせた。
愛しい妹同然だった彼女を思い起こして、まじまじと見つめてしまう。そんなはずはないのに、まるで年を取った紗奈恵が生きてそこにいるような印象さえ受けて、そんな自分が不思議になった。
そもそも桃宮紗江子という女性は、元からこのような雰囲気だっただろうか。そんな違和感が頭の片隅に過ぎったものの、話していると気のせいにも思えた。
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二階の部屋で、蒼慶達と桃宮一家の交流会が行われている中。
本館に戻った雪弥は、半円形状の大階段の途中で、宵月と並んで腰かけていた。どちらも膝を抱えるようして座り、階上の開かれた大扉の向こうから、時々こぼれてくる笑い声にぼんやりと耳を傾けている。
「兄さん達、結構話し込んでいるみたいですね」
「そのようですね」
時々、廊下や大階段を通って行く使用人達が、驚いたように二人を見ては、そそくさとその場を去っていっていた。