「しっかし、なんでこの職場は毎度、仕事が終わるたびに健康チェックをするんだろうなぁ。昔っからそれが不思議というか、せっかくもらった休日でも実行されるのが、ちょっと面倒……」
そう独り言を続ける雪弥の後ろの門扉には、屈強な大男の警備員が立っていた。彫りの深い顔の眉が隠れるほど、深く制服帽をかぶっている。
彼が軍の中でも、上位クラスの人間である事を知っているのは、特殊機関に務めるエージェントとごく一部の人間だけである。雪弥は背伸びを一つすると、付き合いの長い彼を振り返り、冗談交じりで気分良く声を掛けた。
「これから、大自然の新鮮な空気を吸って来るよ」
「いってらっしゃいませ」
表向き警備員の彼は、軍人立ちをしたまま、気真面目な様子で言って一礼した。
※
エージェントの中で雪弥は、少し特殊な家庭事情を持っていた。彼は、蒼緋蔵グループを率いる大富豪当主の愛人の子である。父である現蒼緋蔵家当主には、きちんとした正妻がいて、彼女には息子が一人、娘が一人いた。
そう独り言を続ける雪弥の後ろの門扉には、屈強な大男の警備員が立っていた。彫りの深い顔の眉が隠れるほど、深く制服帽をかぶっている。
彼が軍の中でも、上位クラスの人間である事を知っているのは、特殊機関に務めるエージェントとごく一部の人間だけである。雪弥は背伸びを一つすると、付き合いの長い彼を振り返り、冗談交じりで気分良く声を掛けた。
「これから、大自然の新鮮な空気を吸って来るよ」
「いってらっしゃいませ」
表向き警備員の彼は、軍人立ちをしたまま、気真面目な様子で言って一礼した。
※
エージェントの中で雪弥は、少し特殊な家庭事情を持っていた。彼は、蒼緋蔵グループを率いる大富豪当主の愛人の子である。父である現蒼緋蔵家当主には、きちんとした正妻がいて、彼女には息子が一人、娘が一人いた。