「なんだ、珍しい事するじゃないの。大人になって、その変はちょっと丸くなったのかしらね?」
おい化けの皮が剥がれそうだぞ、と、言いかけた蒼慶の言葉は続かなかった。ティーカップを持った彼は無表情で、テーブルの下でその足を踏んだ亜希子は作り笑いを張りつかせた状態で、互いに似た絶対零度の眼差しで見つめ合う。
(おい。普段は『あんた』と呼んでハッキリ言ってくる癖に、それが出来ない場所でストレスを発散するみたいに、こうして足で地味に訴える手段に出るところ、どうにかならないのか?)
(足じゃないとダメージないじゃないの。それに、あんたが空気読まないからでしょ)
睨み合ってこっそり言う。
フォークを手に取った紗江子が、またしてもハンカチでこめかみを拭う夫に、優しくケーキを勧めた。それから、視線を移動させてこう尋ねた。
「蒼慶様、他の『役職』はどうでしょう? 結構難しいのではありませんか?」
「難しいところではあるが、蒼緋蔵家は皆協力的なので、順調に進んでくれている」
「頼もしい限りですわね。皆、あなた様だからこそ、ついてこられるのでしょう」
おい化けの皮が剥がれそうだぞ、と、言いかけた蒼慶の言葉は続かなかった。ティーカップを持った彼は無表情で、テーブルの下でその足を踏んだ亜希子は作り笑いを張りつかせた状態で、互いに似た絶対零度の眼差しで見つめ合う。
(おい。普段は『あんた』と呼んでハッキリ言ってくる癖に、それが出来ない場所でストレスを発散するみたいに、こうして足で地味に訴える手段に出るところ、どうにかならないのか?)
(足じゃないとダメージないじゃないの。それに、あんたが空気読まないからでしょ)
睨み合ってこっそり言う。
フォークを手に取った紗江子が、またしてもハンカチでこめかみを拭う夫に、優しくケーキを勧めた。それから、視線を移動させてこう尋ねた。
「蒼慶様、他の『役職』はどうでしょう? 結構難しいのではありませんか?」
「難しいところではあるが、蒼緋蔵家は皆協力的なので、順調に進んでくれている」
「頼もしい限りですわね。皆、あなた様だからこそ、ついてこられるのでしょう」