桃宮夫妻が、驚いたように丸い目を見開いた。
「まぁっ。蒼慶様、それは本当ですの?」
「緋菜であれば、その『役職』が務まると蒼緋蔵家の多くが推薦し、権限を持つ者が集った場にて、全員の賛成一致で受理された。当主と私で、本人の意思も確認してある――アメリカに渡る前の朗報だ、今は他言無用で頼む」
ふっと不敵に笑んだ蒼慶が、やや柔らかい声色で言ってティーカップを手に取った。
桃宮夫妻は、しばらくお互いを見つめ合っていたが、それぞれが微笑をたたえた。桃宮家が今年で代替わりしたように、近い将来は蒼緋蔵家の当主となる彼へと向き直る。
「それは、おめでたい事ですわ。数代振りの、女性の『役職』ですわね。本当におめでとうございます」
「アメリカに旅立つ前に、良い事を聞きました。感謝致します」
昔から交流があった緋菜の朗報である。我が子のように喜ぶ婦人に対して、けれど桃宮はぎこちなく笑っていた。
亜希子は、自分の息子を探るように見つめた。紅茶を口に付けようとしていた蒼慶が、「前もって祝いに来てくれた礼だ」と言うのを聞いて、やや納得したように肩から力を抜いた。
「まぁっ。蒼慶様、それは本当ですの?」
「緋菜であれば、その『役職』が務まると蒼緋蔵家の多くが推薦し、権限を持つ者が集った場にて、全員の賛成一致で受理された。当主と私で、本人の意思も確認してある――アメリカに渡る前の朗報だ、今は他言無用で頼む」
ふっと不敵に笑んだ蒼慶が、やや柔らかい声色で言ってティーカップを手に取った。
桃宮夫妻は、しばらくお互いを見つめ合っていたが、それぞれが微笑をたたえた。桃宮家が今年で代替わりしたように、近い将来は蒼緋蔵家の当主となる彼へと向き直る。
「それは、おめでたい事ですわ。数代振りの、女性の『役職』ですわね。本当におめでとうございます」
「アメリカに旅立つ前に、良い事を聞きました。感謝致します」
昔から交流があった緋菜の朗報である。我が子のように喜ぶ婦人に対して、けれど桃宮はぎこちなく笑っていた。
亜希子は、自分の息子を探るように見つめた。紅茶を口に付けようとしていた蒼慶が、「前もって祝いに来てくれた礼だ」と言うのを聞いて、やや納得したように肩から力を抜いた。