庭園の花々の匂いを含んだそよ風が、テラスから吹き込んだ。亜希子が「良い風ねぇ」と言って、再び紅茶を口にする。桃宮や蒼慶は口を閉じており、心地よさそうな表情を浮かべた紗江子が、カーテンのはためく音に耳を澄ませていた。
「私達のところへも、お嬢様のお噂は色々と入っておりますよ」
風が少しやんだ拍子に、桃宮がそう言った。
亜希子は意外そうな表情を浮かべると、「一体どんな噂ですの?」と客人向けの婦人声で尋ねる。その隣で蒼慶が、げんなりとした表情を薄く浮かべるのを気配で察した彼女は、器用にも客人から見えないテーブル下で足を踏んだ。
「蒼緋蔵家が、とうとう彼女の婚約者を探し始めているとか、蒼緋蔵家の会社に勤めているというのは形上だけで、既に彼女の『お相手』は決まっていて、裏ではその婚姻の準備が着々と進んでいる、など色々とあります」
それを聞いた亜希子は、心底驚いたような表情を浮かべた。本家に女子が生まれるのも少ないから、まだ二十三歳なのにそんなに注目されているのかしら、と目を丸くしてしまう。
「私達のところへも、お嬢様のお噂は色々と入っておりますよ」
風が少しやんだ拍子に、桃宮がそう言った。
亜希子は意外そうな表情を浮かべると、「一体どんな噂ですの?」と客人向けの婦人声で尋ねる。その隣で蒼慶が、げんなりとした表情を薄く浮かべるのを気配で察した彼女は、器用にも客人から見えないテーブル下で足を踏んだ。
「蒼緋蔵家が、とうとう彼女の婚約者を探し始めているとか、蒼緋蔵家の会社に勤めているというのは形上だけで、既に彼女の『お相手』は決まっていて、裏ではその婚姻の準備が着々と進んでいる、など色々とあります」
それを聞いた亜希子は、心底驚いたような表情を浮かべた。本家に女子が生まれるのも少ないから、まだ二十三歳なのにそんなに注目されているのかしら、と目を丸くしてしまう。