改めて客人を迎えた蒼緋蔵家の面々は、雪弥と宵月が不在の中、二階の広いリビングに場所を移していた。

 向かい合うアンティーク風の長ソファには、蒼慶と亜希子、桃宮勝昭とその妻の紗江子の四人が腰かけて向かい合う。双方の間にあるガラステーブルには、人数分の紅茶とケーキが並んでいた。

「当主の席を譲って、その引き継ぎを完全に終えたのが、最近だったか。そのせいか、桃宮前当主は随分と丸くなったな」

 場の緊張を解すようにして、蒼慶が凛々しい美麗な顔に薄らと笑みを浮かべて、そう述べた。一見するときつい言い方だが、その声色には嫌味ったらしい響きはない。
 彼に馴染みの冗談を言われた桃宮は、愛想の似合う顔に乾いた笑みを浮かべた。

「ははは、私はそんなに丸くなりましたか。いやはや桃宮の本家に婿入りして、しばらくしてようやく、あちらに男児が授かりましてね。今年に入って、当主という荷が下りたせいでしょうかね」
「そうだろうな。現役だったこの前までは、蒼緋蔵家というより、桃宮一族の人間らしく食えそうにない男だった」

 蒼慶はそこで言葉を切って、ティーカップを口に運んだ。その隣では、本日二度目となる茶会となった母の亜希子が、ケーキを食べ進めつつも、お客様向けの優雅な微笑を浮かべている。