朝の陽の光が、彼の灰色とも蒼色ともつかない髪を照らしていた。風が吹くたび、柔らかな髪先が揺れて、不思議な色合いをそこに奏でていく。

「昔からやや明るかったけど、なんだか歳を取ったみたいだなぁ」

 ふと自分の前髪が目に留まった雪弥は、指先で少しつまんで、日差しに透かし見た。
 色素がちょっと抜けたというか、なんだかやや明るくなっている気がする。けれど、しばし眺めていると昔からこうであったような気もしてきて、「まぁいいか」と考えるのをやめて手を離した。

「まぁ、歳を取ると白髪にもなるし」

 休みだという気の緩みもあって、つい腕を組んで思案を口にする。その前を通り過ぎていったスーツの中年男性二人組が、「……こいつ、若いのになんでジジ臭いこと言ってんだろうな」と口の中に呟きを落としていた。

 雪弥は、グレーのスーツに身を包んでいた。すらっとした細い身体に、白い肌に浮くカラーコンタクトで色を変えられた黒い瞳。端整な顔立ちながら目元は優しげで、高級スーツや高価な腕時計をしていても、重々しい威圧感は感じられない。