邪魔者がいるのなら、排除しなければならない。

 よくも堂々と、蒼緋蔵家の土地を踏み荒らしてくれたな。


 殺シテくれる。こノ牙デ噛み砕き、爪でヒき裂くのダ。

 当主とソノ一族を、脅かシテなるモノカ。我ガ手の届くウチデ、勝手な真似ナドさせはせぬ。


 殺せ殺せ全て殺しテシマエ「兄を守らなければ」殺シテクレルこの怨み忘れハセヌ「私は兄のための右腕だった」殺セ殺セ殺セ「きっと守るよ」喰ッテヤル殺せ殺せ嗚呼殺シタイ「ごめん副当主として、もっと役に立ちたかったのに」「私は【番犬】としては不完全だ、『緋サラギ様』の番犬みたいに非道にはなれない」殺サセロ「あの大きな犬は、どんな想いで死んでいったのだろうか」モット殺シタイ「兄さん、ここでさよならだ」殺す殺す殺す殺殺殺……

『全軍前へ。もし(ふくとうしゅ)が死んでも、構わず戦い続けろ。決して奴らを、当主(あに)のいるところまで踏み込ませるな』


 
 不意に、雪弥は我に返った。

 一瞬、意識が途切れていた気がする。頭の中で忙しなく『何か』を考えて思い出していたようにも感じたが、何も覚えていなくて、きっと気のせいだろうと思った。