「よ、宵月様ッ、馬が……!」

 けれど混乱しているためか、言葉は上手く続かない。

 既に、仔馬は死骸の状態であるとは見えている。宵月が「おどきなさい」と厳しい口調で告げて、男の脇を大股で通り過ぎた。現場の光景を改めて目に留めた高齢の男と、駆け付けた馬の世話掛かりの仲間達の間に緊張が走った。

 そこにあったのは、すっかり血肉の感じられなくなった仔馬の死骸だった。苦しそうに開かれた口、身をよじるように伸ばされた四肢。水分がなくなった黒い皮が、骨に吸いつくように張りついている。

 その硬く黒ずんだようにも見える仔馬の死骸は、もう随分長いこと放置されたような印象さえあった。それを宵月が厳しい表情で見下ろす中、第一発見者となった若い男がうろたえてこう言った。

「あ、ありえない。だってこんな……朝まで元気だったのにッ」

 集った他の男達も、強張った顔で変わり果てた仔馬を見つめていた。誰もが発する言葉が見付からない様子でいた、その時――