「渡辺たちがいないようですが、探しに向かっているのですか?」
「はい。足に自信のある若い連中を、先に捜索へと向かわせました。お屋敷の高い塀で、敷地内からは出られないでしょう。あの仔馬は遠くまで歩かせた事はないので、まずは近くの方を――」
その時、遠くから短い悲鳴のようなものが上がるのが聞こえて、話し途中だった高齢の男が口を閉じた。
雪弥は、真っ直ぐに声の方向を捉えて、目と耳を鋭く研ぎ澄ませた。何事かと使用人達が辺りを見回す中、宵月も彼と同じ方向へと視線を投げていた。
「だいぶ奥のようですね」
「桜木の方からだ」
開いた雪弥の瞳孔が、常人を超えた視力でもって、芝生地帯の奥に並ぶ青々と茂った桜の木を視認した。そこには腰を抜かせた男がいて、横たわる一頭の仔馬らしき肢体も確認出来た。
「――あそこに、男が一人。仔馬もいる」
雪弥は、淡い光の輪郭を描く小さな瞳孔を、そちらへ固定したまま言った。
「はい。足に自信のある若い連中を、先に捜索へと向かわせました。お屋敷の高い塀で、敷地内からは出られないでしょう。あの仔馬は遠くまで歩かせた事はないので、まずは近くの方を――」
その時、遠くから短い悲鳴のようなものが上がるのが聞こえて、話し途中だった高齢の男が口を閉じた。
雪弥は、真っ直ぐに声の方向を捉えて、目と耳を鋭く研ぎ澄ませた。何事かと使用人達が辺りを見回す中、宵月も彼と同じ方向へと視線を投げていた。
「だいぶ奥のようですね」
「桜木の方からだ」
開いた雪弥の瞳孔が、常人を超えた視力でもって、芝生地帯の奥に並ぶ青々と茂った桜の木を視認した。そこには腰を抜かせた男がいて、横たわる一頭の仔馬らしき肢体も確認出来た。
「――あそこに、男が一人。仔馬もいる」
雪弥は、淡い光の輪郭を描く小さな瞳孔を、そちらへ固定したまま言った。