「それで、貴方様はシャワーに行かれるのではなかったのですか?」
問われて、雪弥はギクリとした。そもそも、あれは蒼慶に断りを入れるための口実であって、そのような予定はなかったからだ。服もたっぷり濡れたわけではなく、既にほとんど乾いてしまっていて、湿りが残っているくらいだった。
「その、少し乾いたみたいだし……、太陽の下にいたらすぐに乾きそうだよ」
そう答えたら、優秀な執事が「なるほど」と短い相槌を打った。
「それでは、庭園へ降りてみますか?」
「外に行ってもいいんですか?」
驚いて尋ね返すと、宵月が「はい」と言って頷く。
「当時より、更に美しい庭園となっておりますので、散策としては楽しめるかと思います。近くには、増築し改装した乗馬用の場所などもありますよ」
「ああ、確か亜希子さんだけじゃなくて、父さんも兄さんも、乗馬が趣味だったっけ?」
「趣味ではなく、蒼緋蔵家の者は、乗馬技術を持っていなければいけないのです」
各名家を把握している事と同じで、必須教養なものであるらしい。雪弥は、緋菜が乗馬している風景を想像しつつ、「僕は乗った事がないなぁ」と感想をこぼした。
問われて、雪弥はギクリとした。そもそも、あれは蒼慶に断りを入れるための口実であって、そのような予定はなかったからだ。服もたっぷり濡れたわけではなく、既にほとんど乾いてしまっていて、湿りが残っているくらいだった。
「その、少し乾いたみたいだし……、太陽の下にいたらすぐに乾きそうだよ」
そう答えたら、優秀な執事が「なるほど」と短い相槌を打った。
「それでは、庭園へ降りてみますか?」
「外に行ってもいいんですか?」
驚いて尋ね返すと、宵月が「はい」と言って頷く。
「当時より、更に美しい庭園となっておりますので、散策としては楽しめるかと思います。近くには、増築し改装した乗馬用の場所などもありますよ」
「ああ、確か亜希子さんだけじゃなくて、父さんも兄さんも、乗馬が趣味だったっけ?」
「趣味ではなく、蒼緋蔵家の者は、乗馬技術を持っていなければいけないのです」
各名家を把握している事と同じで、必須教養なものであるらしい。雪弥は、緋菜が乗馬している風景を想像しつつ、「僕は乗った事がないなぁ」と感想をこぼした。