ヒューガノーズ伯爵邸にて、伯爵夫妻とセドリックと一緒にスコーンを食べて過ごした後、ラビは第三騎士団本部へ向かった幼馴染と分かれた。

 帽子をしっかりとかぶり直して、通り過ぎる周りの人間には目を向けず、近くの地形を把握するため、セドリックからもらった地図を片手にしばらくノエルと歩いた。王都の中心街はどこも道が広々と造られており、複数の美しい塔を持った王宮だけでなく、大聖堂の時計棟もよく見えた。

 以前の氷狼の件で、初出張となったラオルテの町に比べても、王都は行き交う商人の数が圧倒的に多かった。ほとんどの人間が小奇麗にしており、地方商品を売り込む民族衣装の男達の出店も、しっかり屋根が付いていて商品棚には埃一つない。

「王都って意外と、肌の色も髪色も、結構違う人達が集まっているんだね」
『いろんな土地から人間が集まるからな。あの褐色の集団は、潮の匂いがするから船乗りだろうぜ。貿易会社も多いから、ああやって各地を飛び回って王都に出入りしている連中もいる』