そう解釈して、ラビはむっとした。幼い頃は身長差もそこまで大きくなかったというのに、セドリックは騎士学校に通い始めた頃から、急にぐんと身長が伸び始めたのだ。
 ヒューガノーズ伯爵も長身なので、恐らく父親似なのだとは思う。おかげで、今では彼の顔をずっと見ていると首が痛くなる事もあった。

「言っておくけど、オレの身長はこれから伸びる予定なのッ」
「いえ、小さいままでもかわ――」

 そう言いかけて、セドリックは言葉を切った。余計に彼女を怒らせてしまいそうだと察し、口許から手を離すと、ラビを真っ直ぐ見下ろしてそっと目を細めた。


「ラビ。もし良かったら、あなたの髪に触れ――」


 ラビは、「もし良かったら」という言葉を聞く事も、こちらにそっと伸ばされた手を見る事も出来なかった。

 セドリックの向こうに、こちらに向かって猛進してくるノエルとビアンカの姿があった。ノエルの後ろには、威嚇モードで彼を追うビアンカがいて『大きい身体をしてくる癖に、ちょこまかと避けて憎ったらしいですわ!』と叫んで跳躍する。