「先程、ビアンカが走って行くのが見えたのですが、『彼』は動物には見えるということでしたよね? もしかしてビアンカは、ノエルと一緒に走っていってしまったという事でしょうか?」
「うん、そうだと思うよ。いつも追いかけられているんだ」
「えぇと、その、少しだけお時間をくれませんか……?」
「別にいいけど、何かお話でもあるの?」

 尋ね返した途端、何故かセドリックが「……お話」と口の中で反芻し、固まってしまった。口許に手をあてたかと思うと、ゆっくりと顔をそらしていく。

 ラビは、そんな幼馴染に疑問を覚え、少し歩み寄って下から顔を覗きこんでみた。すると、チラリとこちらを見つめ返した彼が、すぐに視線を外して、まるで話の矛先を変えるようにこんな話題を振ってきた。

「…………実を言うと昔から、背の低いあなたが、こうして近くから僕を見上げてくれる感じが一心に話を聞いてくれているみたいで、とても嬉しいと言いますか……」

 なんだそれは、つまりチビだと言いたいのか?