ラビは、すぐにそれが伯爵の嘘だと分かった。

 だって、大きくなったのに抱き上げるとか、普通はやらないと思う。

 ただ単に伯爵がそうしたいだけであると解釈して、ラビは昔から「セドリック達はそんな事しないよッ」と主張し、抱きしめたりするのはやめて欲しいと言った。

 しかし、そう告げるたびヒューガノーズ伯爵は、「なんならセドリックに『お前はやりたいと思うか?』と訊いてごらん。絶対に私と同意見だと思うね!」と自信たっぷりに言って、今でも抱き締め癖をやめてくれなかった。


 そういえば、そんな事は有り得ないと思って、セドリック本人に訊いて確かめた事はなかったな……


 ヒューガノーズ伯爵に容赦なく抱き締められて背骨が軋む中、ラビは「死にそうだ……」と呟きながらそれを思い返した。その様子を、セドリックが父親を止める訳でもなく、どこかそわそわと見つめていた。

『説教に付き合ってられるかってんだッ』
『あッ、お待ちなさいな! まだ終わっていませんわよ!』