まるで標的をロックオンするように、エメラルドの瞳孔を開かせた白猫ビアンカが、絶対零度の眼差しをノエルに向けていた。

 それを受け止める彼の口許は、引き攣っている。

『犬臭いですわ。そして、ラビィとセドリック様と一緒に堂々とやってきたあなたには、心底失望致しました』
『久々に顔合わせたと思ったら、すぐこれかよ……』
『空気を読んで、少し離れて見守るくらい出来ませんの?』
『おいおい、恋人を実家に連れてくるってイベントでもねぇのに、それ必要か? ラビにとっちゃあいつは、まだまだ幼馴染の弟枠のまんまなんだぜ?』


 ラビは後半の伯爵母子の会話と、ノエル達の会話を聞いていなかった。夫人に続いて、一人のややふっくらとした大男が部屋から飛び出してきて、抱き上げられたと思ったらもみくちゃにされていたからだ。

「今日も見事な金髪だねラビィ! ああ、すまない『ラビ』だったね。あああああああもうなんって可愛いんだろう! ちょっと見ない間にますます美人さんになっちゃって!」
「うっぎゃああああああ! 鬚がじょわじょわするぅぅうううう!?」