「ラビ、いらっしゃい。到着を今か今かと待っていたところよ」
「お久しぶりです。元気そうで良かった」

 ラビがそう答える間にも、伯爵夫人はビアンカを抱えて立ち上がっていた。

 ホノワ村では、使用人と一緒に趣味の菜園も行っていたくらい活発な貴婦人である彼女は、次に、ラビの手を残念そうにそっと離した息子セドリックを見て、どこか微笑ましそうに目元を和らげながら「おかえりなさい」とにっこりした。

「またこの後、お仕事に戻るのでしょう? 多めに作ったのよ。まだお昼には早いから、沢山スコーンを食べて行ってね?」
「ありがとうございます、母上」
「うふふ、良かったわねぇ。いつの日か楽しみにしているわ」
「その、タイミングが……気持ちも確認しないといけないですし……」
「あら、照れちゃってまぁ。私は大丈夫だと思うけれど。そうね、まだまだ子供みたいなところがあるから、ゆっくり時間をかけるのも大切かもしれないわね」

 そんな母と子の、ふわふわとした穏やかなやりとりのそばで――