歩き出した二人についていきながら、ノエルはなんともいえない表情で、ついチラリと周りの使用人の様子を盗み見てしまった。

 ラビの金髪に苦手意識を持っていないばかりか、歓迎するように「ようやく坊ちゃまにも春がッ」と感動して瞳を潤ませるメイドや、手を叩いて「坊ちゃまがまた一歩踏み出したぞッ」と成長を喜ぶ男性使用人の姿があった。

「嬉し過ぎて台詞の組み合わせを完全に間違えてるけど、坊ちゃん立派になられて」
「本番まであとどのくらいかかるのか分からないけど、良かったですね、坊ちゃん!」

 そう言って、本気で感動し瞳を潤ませる中年の使用人達までいた。

『…………あの台詞に違和感を覚えない鈍さってのも、最強だよなぁ』


 ちょうど屋敷内に足を踏み入れたところだったラビは、その呟きが少し耳に入って、後ろを付いてくるノエルを見やった。

「どうしたの、ノエル?」
『いや、なんでもない』

 隣に移動してきたノエルが、溜息混じりに『気にするな』と言った。