スムーズに話しをしていたセドリックが、そこで不意に「あの……」と少し視線を泳がせて言葉を切った。ラビは、それを不思議に思って「どうしたの?」と声を掛けた。

「伯爵を待たせているのも悪いし、早く行こうぜ?」
「その、家の中はかなり広いですし、ラビはこの伯爵邸が初めてで…………えぇと、出来れば僕が案内したいなぁと……」
「何言ってんの、案内してもらわないと分からないよ」
「……あの、そういう事ではなくて、つまり、その」

 彼はますますしどろもどろになり、口の中でもごもごと言う。

 屋敷の玄関前で待機していた使用人達が、「坊ちゃんファイトですッ」とどこか応援するように小さくメッセージを投げてきた。ラビは、セドリックの向こうに見えるそんな使用人達の光景に疑問を覚えて、意味が分かず顔を顰めた。

 ホノワ村にいた伯爵家の使用人たち同様、どうやら自分の金髪金目に対して、伯爵本邸の人達も忌み嫌うような目を向けていないらしいとは分かった。おかげで王宮や王都内を移動していた時のような居心地の悪さはない。