「ラビの王都行きが決定してから、母が別荘の使用人を連れて伯爵邸に戻ってきたんですよ。おかげで毎日スコーン続きですし、父が特に嬉しがって数日は夕食が宴の席のようになっていました」
「えッ? 夫人がこっちに戻ってきたの? おめでとう!」

 それはとても目出たい話である。いつかは王都の本邸で一緒に暮らせるようになりたい、というのはセドリック達から聞かされていたので、ラビは素直に喜んだ。

「ラビが王都に到着する予定日は事前に知らされていましたから、母も張り切ってスコーンを焼いていますよ。父も朝はゆっくりと過ごしていて、あなたの顔を見てから出掛けるつもりで待機しているようです」

 ヒューガノーズ伯爵とは数ヶ月前に顔を会せたきりだったので、会えるのはとても嬉しい。自分が若い頃は美形ではなかったからと、長男を『妻に似て美しい』と妙な方向で褒める彼は、元気にしているだろうか?

 少し小腹もすいてきたタイミングだったので、伯爵夫人お手製の甘いスコーンが食べられるというのも楽しみだった。それは昔から、ラビの大好物の一つである。