――もう私も長くはない。さらばだ、友よ。

 ああ、おやすみ。

 俺はそう告げて、初めて長い時を共に過ごした人間の友に、別れを告げた。
 妖獣には生まれた時から役割を持つモノがいて、同種を持たない高位獣がそれにあたる。馬鹿みてぇに広い妖獣の世界で、俺もそのうちの一頭だった。

 人間界と妖獣界の繋がりが断たれ、どちらの世界も静かになった。

 どれくらいの時が経った頃だったか、俺は何気なしに腰を上げて、気まぐれのように再び世界の境界線を飛び越えた。脆く美しい人間界が壊れないよう、小さく、小さく……何者も怯えて逃げ出さない、出来るだけ地上の生物に近い形を整えて。


 時代をいくつも見るくらい、とても長い独りきりの散歩をした。
 こっちの世界で過ごした三つの節目を夢で思い出し、虚しさと共に目が覚める。

 人間世界を訪れて初めて脆弱な生物を知った頃、風変わりな人間の友に出会えた頃、そして初めての友の死――