ルーファスがにこにこと見つめる中、ノエルは、自分の姿がラビ以外には見えないと知りつつも、思わず前足で顔を隠した。

『……ラビ、頼むからこのタイミングでクソ可愛い事してくれるなよ……緊張感が丸ごと吹き飛ぶだろうが……そういう所もチビの時から何一つ変わってないとか逆にすげぇわ…………』
「え、今なんて言ったの? よく聞こえなかった」
『…………うん、なんでもねぇよ。お前、マジで俺の耳とか好きだよな』

 両手で両方の耳をふにふにとされていたノエルは、もう彼女の好きにさせる事にして、諦めてそのまま説明を続けた。

『【月の石】同様に、昔は魔力を有した鉱物も多く存在していた。元々【使い手】となる人間は――面倒だから【妖獣師】で統一するか――は、それを使って術を起こし、動物だけでなく妖獣との共存にも一役買っていた』
「魔力を使って術を行使……つまりは『魔術』という表現が適しているのかな?」

 ルーファスが、馴染みのない魔法のような不思議な力について、そう憶測を述べた。