「まさにその通りだよ、君は人間の世界をよく知っているようだね。そして妖獣である君なら、姿を見せる方法が先に口にしていた【月の石】の他にもあると、知っているはずだろう?」

 話を聞くのかも君の自由だ。そう笑顔で爽やかに挑発するルーファスに対して、ノエルは『面白くなってきたな』と牙を覗かせてニヤリとした。

 ラビは、もし彼の意思で自由に『実体化』というものが出来る方法があるのなら、知りたかった。ラオルテの町で騎士団がノエルと交流していた時のような、誰もノエルを『いないモノ』として無視しない素敵な光景があればいい。


 幼い頃、両親に親友を紹介したら「私達には見えないよ」「ごめんね」と謝られた。その時、ノエルが少し寂しそうに笑って『だから言ったろ? 俺は見えない人間にとって、いないも同然なんだよ』と言った事を覚えている。

 寂しくないのと尋ねたら、ノエルは、寂しいなんてないよと答えた。

 けれど金髪金目というだけで存在を無視されてきたから、ラビはその辛さを知っていた。だから、動物以外の誰にも見えないという状況を悲しいと感じた。