「だからこそ、君は姿を見せないままなんだね?」

 そこでようやく、ルーファスが美麗な笑顔で確認するようにそう言った。

 その親愛さを感じさせる表情を胡散臭そうに見つめながら、ノエルは『おぅ』とぶっきらぼうに即答した。

『調べたってんなら、俺みたいな存在のやつらが溢れていた時代があって、獣師みてぇな連中が術を使っていたってのも分かってんだろ? 俺は、ラビを無理やり【使い手】にして、負担を掛けるつもりはねぇって事だ』
「そういえば文献にも【使い手】という言葉があったな。――もし、ラビがそうなった場合のリスクは?」
『ラビには魔力――っと、そう言っても伝わらねぇか。術を使うためのエネルギーがほとんどない』

 ノエルは言葉を言い直して、説明を続けた。

『そうすると、ラビの場合は、ごっそり体力の方を奪われる事になる。量を調整して加減すれば少しくらいはいけるかもしれねぇが、俺は他の妖獣に比べて少し消費効率の悪ぃ身体をしてんだ。だから、今すぐ俺の姿が見たいと人間の王に要求されようが、俺はしねぇ』