「その理由を聞いてもいいかい? 私は弟や、弟の補佐官よりも事情を知らないでいる」

 そう尋ね返してきたルーファスを見て、ノエルが面倒そうに首を傾けた。ラビ達が話し合いを見守る姿勢でいるのを見て、仕方ないとばかりにルーファスへ言葉を続ける。

『そうだな……簡単に言っちまうと、ラオルテの時は【月の石】と呼ばれる、俺ら自身で【実体化】出来るようなアイテムがあった。あれは本来、大昔に掘り起こす事も使う事も禁じられた物だ。ラオルテに出た分を俺がうっかり全部使っちまって、しばらく実体化したままだったって訳さ』

 ざっくりとした説明だったものの、それを聞いたルーファスは、詳細説明を求める事もせず「なるほど『アイテム』ね」とどこか含むような満足げな笑みを浮かべた。普段の彼を知るセドリックとユリシスは、珍しいな、と訝しげに眉を寄せる。

『実体化にはエネルギーが要る。術者の魔力――まぁ分かり易く言えば人間でいうところの体力みてぇなもんか? 俺の場合は、姿が見えているラビから『体力』をもらえば実体化も可能だが、負担になる』