『おい眼鏡野郎、一瞬動揺したと思ったら、すぐ冷静に返って苛立ちをぶつけてくんのをやめろ。今すぐぶっ飛ばされてぇのか。それに俺は犬じゃねぇ、狼だッ』
「あなた、声を聞こえるようにする事が出来たんですか?」
『てめぇも手を伸ばしてくんな伯爵家の次男坊!』

 ノエルが叱りつけるように言い、近くまで伸ばされた手を尻尾で払いのけた。途端にセドリックが「痛いっ」と驚きの声を上げる。

 ルーファスは眉一つ動かさず、どこか関心したように首を小さく傾けた。

「ほぉ。セドリックが触れたという事は――姿は映らなくとも、実体はあるのか」
『実体はあっても、人間界に適した【実体化】っつうのをやらないと、俺らの姿はこっちの世界の人間の目には映らねぇ。動物とは五感の境目が少ないから、奴らとは普通に交流も取れるんだけどな』

 ノエルは、セドリックが静かになったのをきちんと確認してから、絨毯の敷かれた床に腰を落とした。

『今の俺が出来る事は、こうして【声】を聞こえるようにしてやれるくらいだ』