ラビの隣に腰を下ろしていたノエルは、漆黒の優雅な尻尾を揺らし、彼女の幼馴染であり、セドリックの兄であるルーファスを気だるげに見据えた。

『伯爵家の長男坊――いや、ここはちゃんとルーファスと呼ぶべきか。俺はノエル、お察しの通り【妖獣】だ。俺らは普通の人間の目には映らない。この前のはちょっとしたアクシデントみてぇなもので、残念だが、今の状況で姿を見せるようにはしてやれねぇ』

 どこからか聞こえる声の方向に、セドリックとユリシスがハッとして顔を向けた。

 その様子から、彼らにもノエルの声が聞こえているのだと遅れて気付き、ラビは小さく飛び上がった。思わず、じっとルーファスを見据えるノエルの横顔を、素早く確認してしまう。

「ちょ、ノエルッ、なんか皆に声が聞こえてるみたいなんだけど!?」
「その声は、先日に聞いたふてぶてしい犬のものですね。一体どういう仕組みなんですか?」