とはいえ、またしても長時間の馬車旅である。

 しかも、知らせを受けてすぐに荷物を詰めての即出発だった。

 あまりに唐突過ぎるし、やはり、あと一歩というところで『旅に出る』という計画が実行に移せなかったのが憎たらしい。

 この国では、金髪金目は忌み嫌われている。一つの所に留まらず、自分が知らない世界を『誰にも見えない親友』と共に、旅して回ろうかと考えていたというのに……

 速馬が抜擢されているため、上等な馬車とはいえそれなりに揺れた。じっとしているのも慣れない苦行であり、尻と腰の痛みに余計に苛々も増して、ラビは再びむっと口をつぐんだ。

 困ったように微笑む美麗な幼馴染から視線をそらした時、その隣にいた騎士と目が合い、更に彼女の周りの空気は五度下がった。

 しばし互いに、露骨に眉間に皺を刻んで睨み合う。

「相変わらず失礼な子供ですね、君は」
「うるっせぇバーカ」
「なるほど、口の悪さも健在ですか。――『彼』もついてきているのですか?」

 そう言って、細い銀縁眼鏡を指で整え直した騎士は、副団長セドリックの補佐官であるユリシス・フォーシスだった。