昔から記憶力は凄まじいものがあったが、たった一冊の本の文章中にあった、一単語を忘れずに覚え続けているというのも驚異的である。一体彼の頭の中には、どれほどの情報が記憶されているのだろうか?

 揃って大人しくなってしまったラビ達の前で、ルーファスは説明を続けた。

「調べてみると、『妖獣』というのは動物に近い形をしたモノ達だった、とされている。彼らは地上の生物ではなく、神の言葉や人の言葉も介する事が出来る知能を持ち、唐突にその姿を現した不思議な存在であった、と」

 つまり、とルーファスは一度言葉を区切り、ラビ達へ視線を戻してから学識を説くように先を続けた。

「そのいくつかの記述から、妖獣という存在の姿は、普段は一部の人間の目にしか映らないモノだったと私は推測した。そこで、ラオルテの氷狼の襲撃の際に、ラビの相棒であったらしいという目撃情報が上がった『突然現れた大型の黒い狼』も、それと同じではないのかと思った訳だよ。そうであれば辻褄は合う」
「…………」