古(いにしえ)の滅び去った時代の存在については、技術の発展していなかった時代背景もあって、土地の風習で行われていた儀式的な物という見解もある。一種のお伽噺や、古代に残された神話なのではないか、ともされて歴史学的には価値を置かれていない。

 当時の人々にとって火や水は特に貴重だったから、それを発生させる害獣を『不思議な生物』として、そう呼んでいたのではないか……というのが現在の多くの学者達の見解だ。

 けれど博物館でチラリと説明を受けた時、妙に引っ掛かったのだとルーファスは語った。

「少し記憶を辿って、全く別系統の古書で同じキーワードを見掛けていた事に気付いた。大昔の人間が残した農業録だったはずで、だからこそ、それはそれで『おかしいな』と」

 まるで生活に根付いていたと思わせるくらいあっさりと、見逃してしまうほど自然に『妖獣』という単語が一つ書かれていたのを覚えていたらしい。もしお伽噺の中で語られるような創作単語だとしたら、それは矛盾が生じるものである。