普段の総団長の顔で、そうつらつらと語るルーファスを見て、ユリシスが口角を引き攣らせ「さすが総団長ですね……」と言った。セドリックは、これを直接ウチの団長に言ってないといいんだけど、と胃腸がかなり弱い直属の上司を心配して口の中で呟く。

 プライベートでは見る事がなかった毅然とした雰囲気に、若干緊張を覚えたラビに気付いて、ルーファスは表情を和らげた。

「話しにくい内容であるだろうし、先に私が持っている手の内の情報を開示しよう。この件に関して、私がある程度の推測を立てられた理由について、まずは話すよ。それが合っているのか、正しいのか正確なところは分からないけれどね」

 今回の氷狼の事件には、関連性があると直感的に思ったのだと続けて、ルーファスは手に持っていた資料を書斎机の上戻した。なんでもない話を語るように、長椅子の背にもたれてのんびりとした様子で宙を見やる。

「今回の件を聞いた時に、私は総団長となってから、古代博物館を視察する機会があった事を思い出してね。それは閲覧規制されている古い文献で『妖獣』という記述がされていて、魔術やら呪いやらがあった時代であった、と書かれていた」