「ラビの『独り言』にも、何かしら理由があるのだろうと思った。ようやく今になってヒントがいくつか出てきて、私の方でも可能性を絞り込んで念入りに調べた。――それだけだよ、セドリック」

 少し考えれば不自然さは色々と出てくる、と彼は言いながら、書斎机の上にあった資料の束を拾い上げた。上司らしい冷やかで鋭い眼差しをセドリックに戻すと、手に持ったそれを軽く振って見せる。

「恐らく第三騎士団の中で、秘密にするとでもいう結論をしたのだろうね。けれど覚えておくといい、セドリック。緘口令を強いて隠し事をするのなら、徹底的にやるべきだ。おかげで、私の方で根回しに人員を裂く事になった」

 不思議な出来事だったのではないか、とする人々に、実はなんでもないものだったのだと情報をすり替え、植え付けるのも必要である。複数の仕掛け人をおけば噂は勝手に広がって事実となる。そこに証拠が何もなくとも、だ。